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12月 「ヤング・ポートフォリオ発祥の地・清里フォトアートミュージアムを訪ねて」

ミュージアムを象徴するかの様に
飾られている大型カメラ
自然に包まれた環境に建つ、
すっきりした外観のK*MoPA本館

若い写真家達の才能を積極的に評価するということで知られる清里フォトアートミュージアム(以下「K*MoPA」)。このK*MoPAは単なる若手発掘だけでなく、様々な企画展、またK*MoPAの設備自体など、様々な魅力があります。今回は編集部がK*MoPAへ赴き、館内を探検してきました。

インタビューに応じてくださった方
清里フォトアートミュージアム広報主任:小川直美氏

お話を伺った小川氏

2003年で開館から丸8年となりましたが、改めてどうして写真の美術館を作ることになったのか、そのための場所がなぜ清里であったのかをお聞かせ下さい。

○開館当時は、写真コレクションを展示するという専門的な美術館はそう多くありませんでした。そこで、コレクションを単に収集・収蔵するだけでなく、日本国内における文化的貢献とコレクションを広く一般の方に鑑賞してもらうという目的のもと、1995年にオープンしました。
ミュージアムを建てるにあたって清里の地を選んだのは、当館の1つめの基本理念でもある《生命(いのち)あるものへの共感》というテーマに基づきます。ここは豊かな自然に囲まれており、四季折々に大地の息吹が感じられる場所です。訪れる方々に「安らぎのスペース」を提供する、という意味で芸術鑑賞にはまさに最適な場所であると言えます。
また開設にあたってはミュージアムに宿泊施設「パトリ」(音楽堂、天文室、テニスコート、トロン温泉などがあります)を併設し、滞在型のコレクション鑑賞というこれまでに例のない贅沢な鑑賞方法を提案しております。

自然光が差し込む閲覧スペース 。
廊下には様々な写真資料が集められて、来館者が自由に閲覧可能

ひとつの企画展示の会期が2〜4ヶ月と長い点はそのゆったりとした提案のひとつかと思いますが、作品展開催にあたって工夫したり苦労されている点はありますか?

○現在は年3〜4本のペースで企画展示を行っておりますが、なかでも一番来場者が増える7〜9月は展示替えを行わず、少しでも多くの方に魅力的な作品を堪能していただくように留意しています。企画のセレクトについては、基本理念に沿って「K*MoPAらしく」を心がけ、じっくり練ったものをじっくり観てもらえるよう企画しております。
また、四季を意識して展示替えを行っておりますので、先程も申し上げた「安らぎのスペース」を年4回は堪能していただけます。つまり、1シーズンに1回は清里に行かなくちゃ(笑)、という吸引力を持てるように努力しています。
また我々の独自企画として毎年必ず開催するのは「ヤング・ポートフォリオ展」です。これは若い才能を発掘する登竜門的存在に成長しつつあり、我々にとって欠かない大切な企画です。

様々な努力によって企画されていることが分かりましたが、現在の年間入場者数はどれぐらいなのでしょうか? またこれまでのなかで来場者のとりわけ多かった写真展・イベントはどれでしょうか?

○現在、年間約2万人の方が来館されます。今まで一番来場者数が多かった写真展は、1996年に開催された井津健郎さんの『アンコール遺跡・光と影』です。これはアンコール遺跡の魅力を、優美な色調と静謐な美しさを持つプラチナ・プリントで展示しました。
アンコールワットを含む著名な遺跡という内容に加えて、保存性の高い珍しいプリント制作方法という点が大好評でした。このときは会期4ヶ月で1万人の動員がありました。
この写真展の後、我々も井津さんがカンボジアの子ども達のために目指された小児病院建設に賛同して展示し、全作品を収蔵した他、映像と音をコラボレートしたチャリティーコンサートを開催し、その収益をアンコール小児医院への寄付に充てております。チャリティーコンサートもご来場下さる方々に満足いただけるクオリティーを追求し、今後も続けていきたいと考えております。

収蔵作品についてですが、K*MoPAの三つの基本理念の2つめに《永遠のプラチナ・プリント》とあり内外から作品を収集しているそうですが、現在の点数はどれぐらいあるのでしょうか。また前回の収蔵作品展は2001年でしたが、今後の予定はありますか?

○当館のコレクションは全部で約5,000点あり、そのうちプラチナ・プリントが約530点です。また2〜3年以内には収蔵作品展を開催したいと考えておりますが、その間に「プラチナ技法を後世に継承していく」という事も重要だと考えています。そのため不定期ではありますが「プラチナ・プリント・ワークショップ」を開催し、そうした考えを実践しています。

プラチナ・プリントと並びK*MoPAと言えば基本理念の3つめである《ヤング・ポートフォリオ展》ですが、その現況をお聞かせいただけますか?

○これは35才以下の若い作家を対象に作品を公募し、選考の上作品を購入・展示するという企画で、当館3つめの基本理念です。
現在すでに8回を数えており、これまでの収蔵点数は約2500点です。これは当館コレクションの約半数を占めており、私たちが次世代写真家に大きな期待を寄せているということをそのまま表している数字ではないかと思います。
未だ評価が定まらず、完成への途上で闘っている青年たちの作品にこそ、時代を切り拓く力が秘められていると考えています。

35歳以下ということであれば、どの国からでも応募受付するのですか?

○写真芸術に国境が無いように、私たちも広く世界から作品を募集しております。初めは日本からの応募がほとんどでしたが、次第にアジアからの応募が増え、1999年度頃からは南北アメリカ、ヨーロッパからの応募も多くなっています。
作品の多国籍化は、当館が1998年の世界の美術館の写真担当キュレーターが集まる国際会議「ORACLE」の会場となり、ホスト館としてヤング・ポートフォリオ作品を紹介したことがきっかけでした。

・2002年度応募内訳:日本国内70%・南北米10%・ヨーロッパ5%・アジア15%

毎年応募し選ばれる方も多いと聞きますし、コマーシャルやドキュメンタリーで現在活躍している作家の名前も見受けられます。そのような状況を見ると「ヤング・ポートフォリオ」の当初の目的はきちんと達成されている印象を受けます。

○若い作家を勇気づける、という意味で確かに成果は上がっています。作品購入が起爆剤となり、その後成長していった作家も数多くいます。広く門戸を開放しておりますので、とにかく若者には諦めずにチャレンジしてもらいたいです。近い将来、ヤング・ポートフォリオ出身の写真家達がどんどん写真界を引っ張って行ってくれたら嬉しいですね。

最近の「ヤング・ポートフォリオ」ではデジタル制作の作品が増えているとも聞きました。若手のデジタル作品と、プラチナ・プリント収集は相対することのように思えますが、その点はどのようにお考えでしょうか? この先デジタル制作の作品は制限することなどは起こり得るのでしょうか?

○今年度の「ヤング・ポートフォリオ」では、デジタル作品応募は約1/4でした。当館としてはデジタルであれアナログであれ、違いはプロセスだけであると考えていますので、力のある作品ならば技法に関わらず収集を続けていきます。
デジタルのインクジェット出力も、顔料系インクの登場でそれまで問題だった保存性もほぼ解決されましたので、今後はもっと応募が増えるだろうと思っております。
永久保存をテーマにコレクションを進めておりますが「デジタルだからいけない」という制限を設けず、デジタルであっても現時点で最も長期保存に耐えうるプリントによって保存して行きたいと考えております。

デジタル化が進む近年ですが、K*MoPAの「永久保存」に対するこだわりの姿勢があらためてよく分かりました。ありがとうございました。


◆編集部の訪問時、館長でもある細江英公氏の回顧展が開催されており、氏のこれまでの集大成ともいえる作品200点が多数の来場者数を集めていました。当日はギャラリートークも行われ、貴重なお話が聞くことが出来ました。
また短い時間でしたが合間にはプラチナ・プリントの重要性について細江館長の考え方を伺うことができました。

〈細江氏談〉 我々が1960年代に使い始めたカラーフィルムは、当時はその保存性が全く未知数でした。実際、その頃のフィルムは現在はほとんど変質または退色してしまっており、カラー分解をしてから保存し直すしかないのが現状です。
最近になって顔料プリントなどアーカイバル対応のカラープリントが可能になりましたが、保存性という意味では1960〜80年代は「Lost Generation」であったといえます。私自身、あの当時の写真をモノクロで撮ってプラチナで残しておけばと悔やむこともあります。
写真家にとって画像の保存というテーマのもとでは、プラチナ・プリントこそが永遠に近いものであると再認識しています。ですから、当館としてもプラチナ・プリントを引き続き推奨したいと考えています。

〈編集後記〉
今回 K*MoPAを訪れみて、改めて写真の原点を振り返る事が出来ました。また四季折々の自然を楽しみながらシーズン毎に通ってみたくなるところです。 K*MoPAは友の会という会員制度があり、図録のプレゼントや文中に紹介した宿泊施設利用などの特典があります。
いつもと違うリフレッシュした気分になれますし、まだ足を運んだ事のない方は是非一度訪れみては如何でしょうか?(文責:編集部)
来館者にレクチャーを行う細江氏

K*MoPAを支えるスタッフの皆さん



=== 2004年2月15日(日)まで開催中 ====
小林正典写真展『命を見つめて―難民、マザー・テレサ、地雷』

小林氏は1994年に国連写真賞を受賞したフォトジャーナリストで、難民問題を取り上げた作品を多数発表しています。2000年に開かれた国連高等弁務官(UNHCR)事務所50周年の記念写真展では同氏の写真が全展示作品の1/3以上を占めており、その意味でも今回の展示は世界的に注目されていてると言えます。3部構成で約200点を展示しています。

・会  場 清里フォトアートミュージアム
・住  所 山梨県北巨摩郡高根町清里3545
・休 館 日 毎週火曜日(祝日の場合は開館)
12月3日(水)・4日(木)、年末年始(12月31日〜1月3日)
・問合せ先 TEL:0551-48-5599 FAX:0551-48-5445
・URL http://www.kmopa.com